ピーエスものがたり

始まりは産業。「高温多湿な日本で、なぜ加湿器を?」

ピーエスは、1960年、日本で最初に産業用の加湿器の製造販売を始めました。創業者はもともと工場のクーラー用ヒータの取り付け工事をしていました。時代は高度経済成長のころ。日本で急成長した繊維や印刷などの工場では機械からの熱で空気が乾燥し静電気が発生、そのたびに機械をストップさせなければなりませんでした。そのような現状を目の当たりにして、加湿器の必要性を感じ、工事業者ではなくメーカーとしての生きる道を決意しました。
「高温多湿な日本で、なぜ加湿器を?」と当時はよく聞かれました。しかし日本の産業市場が高度に発達し、湿度調整の需要が高まり、ピーエスの加湿器が必要とされたのです。1967年に高井戸工場、1970年には宮前工場が稼働しました。自ら市場の開拓を行いながら、会社の仕事の基盤を構築します。

スイスとの出会い

創業してまもなくのころ、アメリカのASHRAEという空調・暖房設備の展示会で、世界で最も優れたスイスの加湿器メーカーDefensor AG(現condair社)との出会いがありました。1968年にDefensor社の加湿器の販売を開始します。ピーエスは自社製の加湿器と合わせて、幅広い種類の加湿器ラインナップを扱い始めます。 同じころ、もうひとつの出会いがありました。それはヨーロッパの質の高い快適で美しい暖房システムでした。これに確信をもったピーエスは、暖房市場の開発を決意。1969年にRuntal社からライセンス契約を受けて、温水暖房ラジエータPS HRヒータの製造と販売を開始します。のちに、日本の地域の気候に合った除湿型放射冷暖房PS HR-Cシステムの誕生へとつながっていきます。

自分たちで木を植える

札幌オリンピックを目前にした1971年、ピーエス札幌工場が稼働します。森の中の工場を夢見たピーエスは、北海道大学に指導を仰ぎます。当時の社員たちは休日に自らの手で木を植えました。木々は、今では美しい林に成長しています。自分たちでできることは自分たちで、そして自然の力をもらって、さらによい仕事をする。これはピーエスの社風として受け継がれています。

快適性の探求。大きな放射面で、低温連続運転。

1972年の札幌オリンピックでは、選手宿舎やプレスセンターの暖房にPS HRヒータが採用されました。当時ピーエスはドイツの研究者や北海道大学の先生方とともに、(囲炉裏で暖を取るというような、採暖に対して)日本に無かった“暖房”という概念を打ち出しました。物理的な観点からのみならず、生態学的な視点からも、室内の快適性について探求を重ねました。ヒータの送水温度を、80~90℃という高温ではなく、30℃~60℃の中~低温にすること、大きな放射面で暖房をすることが、快適性にも省エネ性にも貢献することを実証する機会となったのです。
また、1980年代後半には、冬の暖房だけではない、モンスーン日本で一年中使われる電気ヒータPS HR(E)の製造・販売を開始します。浴室まわりや玄関などに適したPS HR(E)は、PS HRヒータと同様に、大きな放射面で暖房することにより、消費電力を小さくすることができます。放射面が小さくて高温で電力を多く消費するのではなく、放射面が大きくて低温で省エネであることが、快適性を高め人々の健康や快適性に貢献する、これはPS HRヒータの特徴であり、現在も変わらずに基本となる考え方です。

夏の企業として。除湿型放射冷暖房PS HR-Cの開発

夏の蒸し暑さに体が我慢できない!仕事の生産性は落ちる、熱帯夜で眠れない!暑い!暑い!暑い!1980年代、ピーエスは、夏の猛暑時に快適な涼しさを作り出すことへの挑戦を始めます。そこで発明されたのが、夏に放射冷房と自然除湿、冬には放射暖房の機能を持った、東京生まれの除湿型放射冷暖房PS HR-Cです。オフィスで活動する人の仕事の生産性を上げたり、生産現場での作業者や生産プロセスの能率を高めたり、また居住環境においては住む人の健康に寄与する。日本の夏に向き合い、季節を通じて人の活動空間の質を高めることに貢献することで、社会が豊かになることを夢見たのです。
PS HR-Cは当初、人のための設備として開発されました。今では、お客様の要望から、食品やワインや生花など、様々な用途への応用が広がっています。また、その土地にある自然エネルギーを用いて設備を稼働するというニーズにも応えています。

お客様との対話の場。地域のPSi(ピーエスインフォメーションセンター)

除湿型放射冷暖房PS HR-Cの製造販売を開始した1992年、ピーエスは岩手県八幡平市にショールーム兼工場であるPS IDIC(イディック)を開設しました。北東北の気候にあったサステイナブルであり、自然と建築と設備が一体になった人間の活動空間の実証の場であるPS IDICは、訪れるお客様に季節の素晴らしさを感じていただいています。
創業当時から、ピーエスは産業用加湿器だけでなく、実はクーラー用部品のヒータを製造しています。機能部品から出発したピーエスは、やがて、お客様に直接製品をお届けしたいと思うようになりました。部品メーカーではなく、設備の使い方や建物へのデザインなどを、お客様と設計者とピーエスとで共に考え、空間の価値を創造したいと願うようになったのです。そうすることが、空間をより豊かにし、お客様に満足いただける価値を提供できると確信したからです。
このようなわけで、ピーエスは北海道、岩手、東京、熊本に地域の拠点PSiを開いています。それぞれの拠点をつくることそのものが、専門家との共同作業による開発でありました。これからも、PSiはお客様との共同開発の場であり続けます。

「快適」という完成品ではなく、使いながら創り続けたい

ピーエスのコンセプトを表すマークです。名刺や会社案内の冊子で目にされた方もいらっしゃるかもしれません。2015年6月に、現在のマークへデザインが変更になりました。以前はマークの中に「快適」という文字が入っていました。自然はそもそも快いものであり、そこにピーエスを適合させて、お客様に快適をお届けしたい、という意味が込められていました。ですが、快適という言葉では表しきれない価値が実際にはあるということに気がついたのです。
そこで、シンプルに、“自然プラスピーエス”ということでマークを新たにしました。例えば、ピーエスの東京本社のそばにある明治神宮の森は、荒れ地だった土地に計画された人口の森です。成長し続ける森は、今では、参道に落ちた葉を人が森にかえすくらいしか手をいれないそうです。自然と人との関係を一体化するでもなく、切り離すでもなく、自然と自然の間に人が存在するような、それでいて、そこでの営みが生き生きとするような・・・。ピーエスの室内気候もそうしたものでありたい、という思いがあります。